ハーディングフェーレの普段のメンテナンス

演奏弦私のやっている楽器の普段のメンテナンスについて。ハーディングフェーレを始めた頃は、こういうことにとても無頓着でした。周りのノルウェー人の奏者も、どれくらいシステマチックにやっているのかはあまりよく知りませんが、私は一般的に良いとされている方法を組み合わせてやっています。

ハーディングフェーレを始めたころよく疑問に思っていたのは、共鳴弦って張り替えるのか?ということでした。共鳴弦は実際には弓で弾かないのでメロディ弦ほど頻繁に張り替える必要はありません。私の場合は1年に一度です。それ以外の時は、クロスで乾拭きするか、エタノールなどを含ませたクロスで軽く汚れた部分を拭く程度です。エタノールは、あやまって表板につくと、ニスがとれることがあるので、使う時はなるべく板の上に何かを被せて保護します。共鳴弦の種類は前の記事に書きました。それぞれの楽器やメロディ弦のチューニングの音高に合わせて判断します。メロディ弦に使う弦が太い時は共鳴弦も太くするのが一般的です。

ハーディングフェーレにバイオリンの弦を張るのはテンションが高すぎて楽器に負担をかけると言われています。楽器そのものがバイオリンよりも少しネックが短く作られているからです。また、ハーディングフェーレはバイオリンよりもチューニングを高くすることが今まで一般的でした、近年でこそ、バイオリンのA弦をA音にチューニングすることがありますが、古くから一般的なのはそれよりも長1度高いH(B音)です。この基音をどう取るかというのは、ソロ演奏が基本のハーディングフェーレでは、奏者の好みによって判断されるものです。チューニングを高くすると、曲自体が非常にハイテンションな印象になることが多いです。逆に低くするとリラックスした印象になります。曲調や好みによって、B音よりも高く設定する人も時にはいます。もちろん、複数人で同じ曲を弾く時はチューニングを合わせますが、その場合はB音が取られることが最も一般的です。

数少ない普段のメンテナンスの中で、もうひとつ私がやっているのは、指板の調整です。これは1-2年に一度、職人さんに見てもらいますが、普段から指のよく当たる場所がすり減り過ぎないように気をつけています。特に、巻き弦を使うことのあるD線(第3弦)の下はすり減りが起こりやすく、すり減ってしまうとうまく音程が取れなくなります。巻き弦を使わない方法がないわけではなく、PirastroやFanitullenといった弦のメーカーが、芯はガット弦ながら、アルミ、または銀線で全てを覆ったものを販売しています。私はこちらのタイプを使っていますが、巻き弦に比べると上品な音色になります。巻き弦の方がオープンな音色であること、より伝統的であるということで、巻き弦を好む人も多いです。さて、メンテナンスですが、私が職人さんから推奨されている方法を紹介します。すり減ってしまった部分にアロンアルファなどの接着剤を塗る。→完全に硬く乾くまで待つ。(ここで注意!瞬間接着剤であっても、完全に乾くまでは10時間ほどかかります)→非常に目の細かいヤスリをかけて平らにする。

こまめに手入れしていると、最終的にあまり大きく接着剤の面が表面に残らないものですが、残ってしまった場合は、職人さんは何か黒色の粉をふりかけています。私は1-2年の定期的なチェックの合間に自分でやる程度なので、ヤスリまでで終了です。ヤスリをかける時に、平らな小さな木のブロックのようなものをヤスリと反対面に当てておいてかけるとまっすぐかかります。

怖いですか?私も実はそうです。でも意外と失敗はないですよ。

Here I write about the daily maintenance on the instrument. Changing the under-strings is a hard work, but I prefer doing this once in a year. I feel that the sound is refreshed and become easier to tune. Another thing I try doing once in a while is to maintain the finger board.

私の使用楽器と楽器の調整その3 About My Fiddle 3

まず、ナットの交換は、もともとついていた白いボーン素材のものから、黒檀のものに作り変えてもらうことになりました。ハーディングフェーレの場合、弦と弦の間隔はバイオリンよりも広めに作られていることが多く、(これは、多分ノルウェー人男性の手の大きさに合わせているからかと思います)私の場合は、これを限りなくバイオリンの弦間隔くらいのところまで縮めてもらいます。あまり縮めすぎると、かえって隣の弦に指が触れやすく、弾きにくくなります。

それから、弦高の調整です。最初、弦高を見てもらうと、やはり非常に高く設定されているとのことでした。「最終的には駒を削って調整するかな」と言いつつ、試しに、駒を5mmほど移動させてみて、高さを見てみようかということになりました。5mmというと、かなりの移動になるので、駒と同時に魂柱も移動することになります。

数時間の作業の後、第一段階の調整を終えた楽器を弾いて見ると、弦の高さはちょうどよくなっています。でも、見た目がなんか変。駒を前に移動したことで、糸どめに近づきすぎてアンバランスな見た目になってしまいました。そこで最終的に、2mmほど後ろに戻してもらうことに。作業の間中、一旦弦を全て緩めてリラックスさせた楽器は、まるで別のものになったかのようによく響きます。以前は高音が少し甲高い印象でしたが、この作業のおかげでその甲高さはなくなり、リラックスした低音のよく響く、「あの」Hellandの音に。

さらに、響きを調整するためには共鳴弦の太さを変えるのもコツだという話に。これは以前から作業の合間に何度か言われていたのですが、私はすっかり忘れてしまっていました。ハーディングフェーレのメロディ弦には10.5-11-11.5-12の4種類が主に流通しています。共鳴弦の方も、太さは0.22から0.30まで幅広くあります。人によって好みはありますが、弦の組み合わせも一定ではなく、細い弦と太い弦を組み合わせることも多いです。これには諸説あり、同じ太さを好む人もいます。私の場合は、比較的太めの共鳴弦を同じ太さで張っていたのですが、それだと小さな楽器にはテンションが高すぎるかもしれない、と指摘されました。

時間がきたので、ここで工房を後にし、後日、共鳴弦を変えて見ることにしました。指摘された通り、細めの共鳴弦を3種類の太さを組み合わせて張って見たところ、これまた見事に響きが変わりました。これまであまり弾いていなかったこの楽器、これからしばらくはよく弾くことになりそうです!

*ここに載せた調整は、絶対的なものではないかもしれませんが、どなたかの参考になるかもしれないという思いで、ここに記録として書いておくものです。

 

 

 

UCI自転車W杯 Sykkel VM Bergen i 2017

ここで少し休憩して、他の話題に。

私の住む街ベルゲンでは、今、自転車競技のW杯が開催されていて、大変賑わっています。9月16日〜24日の9日間、街の主要な道路を使用しての大会で全世界から延べ500,000人が参加、日本からも12名の選手が参加している模様です。大会も大瀬めを迎えるこの週末の様子を少し書いておこうと思います。

まず、本日のプログラムは男子ジュニア部門と女子プロ選手部門の合同スタート競技。全員一斉にスタートし、街の中の比較的短いコースを8周します。コースにはアップダウンもかなりあり、述べ走行距離158km、時間にすると4時間の競技になります。相当ハード。

そして、これが本日のルート

夕方の女子プロ選手部門の時に、街に見に行きました。

 

ちょうど、カーブを入ってきたところを写真に収めることができましたが、このカーブ、魚市場からきている坂道で、向かいに大きなサーモンの張りぼてがあるので(ちなみにこれは観客向けにサーモンを使用したレシピ紹介と試食のできるブースでした)通称「サーモンカーブ」と呼ばれているらしい(笑)

結果は一位がオランダの選手で4時間6分台。30秒遅れて、オーストリアの選手がゴールしました。日本の選手も50位に入っています。

私の使用楽器 その1 About My Fiddles 1

ハーディングフェーレを始めてから、これまでに何度か楽器を購入しましたが、いつもその時一番のお気に入りというのがあります。今、メインで使っているのは、Salve Håkedalの2009年のもので、優しい音と、深みのある低音、綺麗なデコレーションがとても気に入っています。このサイトの楽器の写真は、私の今使っている楽器のものです。

Salveの楽器はそれよりも以前に使っていた楽器が故障してÅnon Egelandに相談した時に勧められたのですが、それから何年も結局購入する機会がありませんでした。2010年に新しい楽器が必要となり。その時初めて本人に連絡をとり、購入したものです。今まで使っていたものと比べても、たくさんの他の楽器と比べても完成度が高く、安定しているところも大きな魅力です。ハーディングフェーレは変則チューニングが多く、楽器によっては、チューニングを変えると耐えられなかったり、安定するのに時間がかかったりするのですが、この楽器は比較的早く順応してくれるので、どんな場面でも活躍してくれます。

それから6年。あまり誰にも話していませんでしたが、(ノルウェーの知人友人たちにも)昨年、こっそり新しい楽器を購入しました。新しいといっても、100年以上前に作られたものです。

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この楽器の作者は、Olaf G. Hellandといって、テレマルクの有名なハーディングフェーレ職人一族の中でももっとも有名とも言われる人です。ですが、ご覧のように、表板には古い、あまりよくない修理の跡が。。実はこういうのはハーディングフェーレのような民俗楽器には残念ながら比較的よく見られることだそうです。デコレーションは簡潔。Olaf G.の初期に当たる1906年に作られたとされていますが、もっとも作品が高評価されている中後期の作品に比べるとデコレーションは驚くほど簡単です。私としてはシンプルなデザインが気に入ったこと、シンプルな中にもどこそこともない上品な風格があること、深みのある音、などが「気になって」、思い切って購入を決意しました。

「気になって」というのは、実は試し弾きの段階でも、そして購入してからもしばらく、思うように音が出てこなかったからです。以前の持ち主は楽器を弾く人ではありませんでした。あまり弾かないのでこの際修理をして誰か弾く人に、ということで売りに出した模様。何年も弾かれていない楽器を、弾ける状態にするのはなかなか簡単ではありません。幸い、売りに出される前の職人さんがプレーヤーだったこともあり、その時にある程度は弾き込まれているものの、修理から実際に見せてもらうまでに1年ほどもあり、その間、ほどんど弾かれることなく自宅に置かれていたようでした。

購入を決意するまでに2回もそのお宅を訪ね、とても気になっているのになかなか鳴ってくれない楽器を前に、とても迷いましたが、以後、このような機会もないのかもと思い、思い切って購入したのです。

それなのに、楽器は一向に鳴ってくれません。Hellandを弾く腕がないからだと半ば諦め、もう一度売りに出そうかと何度も考えました。

実際に購入してから実に1年以上も同じような状態が続いたのですが、ここ最近、楽器の鳴りが少しよくなってきたので、調整に出して見ることにしたのです。(続く)

In about 7 years, I have been using the fiddle made by Salve Håkedal in 2009, and this is my favorite instrument so far. But recently I got a chance to purchase a new-old fiddle which was made by Olaf Gunnarson Helland in 1906. These 3 articles are about the adjustment for this fiddle recently done in september 2017.

 

私の使用楽器 その2 About My Fiddles 2

Salve Håkedalの楽器は定期的に状態のチェックをしてもらっています。何も問題がないと思っていても、表板がはがれかけていた、とか、指板がすり減ってしまったとか。そういう問題を気づかずに放って置かないためにも、定期チェックを受けるようにしています。(ちなみにハーディングフェーレのD弦は巻き弦を使用することが多いため、指板のすり減りは必ずおきます。できれば自分で1年に一度くらいは手入れをすることを勧められていますが、それについては後述します)

小柄な私は手も小さく、スタンダードカスタマイズの楽器だと、ナットの部分をほぼ必ず調整しなければいけません。2本の弦を同時に押さえる、いわゆるダブルストップ奏法の多いハーディングフェーレでは指が細い、手が小さいというのは不利であるとも言えますが、この部分を調整することによって、ほぼその問題は解決します。新しい楽器は、必ずまずこの調整をしてもらうのですが、今回のHellandの場合は1年以上最初のカスタマイズのまま使っていました。ある程度慣れる部分もあるのですが、やはり弾きにくいので、いつもの定期チェックに加えて、ここをまず調整してもらいたいとお願いしました。

このHelland-feleは、現代のスタンダードの大きさのハーディングフェーレと比べるとやや小振りに作られています。ハーディングフェーレの発展の歴史では一般的に1860年を境に楽器の近代化が計られ、大きな楽器が作られるようになったと言われていますが、詳しく調べて見ると、一概にもそうとは言えないようです。当時人気のあったプレーヤーの楽器を次々と製作していたErik Jonsson Helland (今回のOlaf G.の2世代前の製作家)は1860年代のはじめにコペンハーゲンでバイオリン制作を学び、その後からバイオリンに似た形のものを作り始めたそうですが、旧来型に比べて大きくなってしまった楽器は当時のプレーヤーからは受けが悪く、トレンドの揺り戻しが起こり、しばらくはバイオリンよりは少し小型のものが多く作られたそうです。(Bjørn Aksdal “Hardingfela”参照)

調整を考えた時に、この「小型に作られている」ということがどう影響してくるのか?私は製作のことはわかりませんが、駒の位置、それに関連してくる魂柱の位置というのは当然、影響を受けるのでは、と思います。古い弦楽器修復の際の注意点として、ストップとメンスールの確保、とは聞いたことがありますが、この楽器の場合、おそらく(飽くまでも想像です)オリジナルのものよりは少し大きな現代の駒を置くことによってこの長さを確保していたようです。その結果、楽器は張力、弦高が高く、ストロークも指の力もあまり強くない私には弾きにくいものになっていたようです。もちろん絶対的な正解はなく、個人差があるのでしょうが、残念ながら私のスタイルにはあっていませんでした。そこで、弦高を低くする調整もお願いしました。

小型の楽器ということで、ネックも通常のものよりも5mmほど短く作られています。つまり、左手の指を押さえる位置も現在のものよりも少し狭いわけです。この差に適応できるかどうかは個人差があるでしょうが、私の場合は、時間はかかったもののほぼ適応させていました。もともと手が小さいこともあり、大多数の人よりは影響が少なかったのかもしれません。

新しいナットと、弦高の調整。これが今回の調整の2大テーマです。(続く)

 

 

 

ノルウェーの食べ物 Foods in Norway

ノルウェーの美味しい食べ物といえば、食事系なら、まず、サーモンを思い浮かべる人も多いかと思います。確かに、脂ののったアトランティックサーモン、とても美味しいです。私は今は海沿いのベルゲンに暮らしていますが、オレブルアカデミに通っていたことははもう少し内陸のヴォスVossという街に住んでいました。距離にすると100kmですが、食生活は必ずしも魚系が多いという訳でもなく、どちらかというと、肉系の、それも羊肉やソーセージの類の伝統料理のあるところでした。中でも、秋頃になるとスマーラホーヴェといって、羊の頭部をスモークした伝統料理がスーパーで売られたり、食べられたりする習慣があります。なんでもこの料理はバイキング時代から続く伝統だそうですが、そのグロテスクな見た目から、現在ではあまり人気のあるお料理という訳ではありません。そのせいもあってか、10月にはスマーラホーヴェ フェスティバルなるものが開かれ、街をあげて、このお料理を食べるという習慣があります。
日本では伝統料理というと、豊かな食文化でも知られる通り、「健康的」なイメージがありますが、ノルウェーでは必ずしもそうではなく、スモークされたお肉やお魚などの保存食が多く、こういった料理はスペーケマートと呼ばれます。塩分は気にする必要はあるのですが、もちろん、丹精込めて作られたこういった食事も、味に慣れてくると、大変なご馳走に感じられます。フラットブレッドやポテトサラダ、グリーンサラダなどと一緒に食べられるものです。
必ずしもスペーケマートという訳ではありませんが、ソーセージや羊のお肉に合わせて秋口のこの季節、よく食べられるのが「コムレ」もしくは「ラスペカーケ」というジャガイモをすりつぶして作られれるポテトボールです。茹でたジャガイモのすりつぶしと、生のジャガイモのすりおろしに小麦粉と大麦粉(省いても可)を混ぜて作ったボールを、ブイヨンを入れたお湯で茹でて作ります。なんというか、大きいニョッキのような食べ物ですが、ジャガイモに比べて食べ応えがあり、一つ食べただけでもお腹いっぱいになってしまうような食べ物です。
このラスペカーケ、どういうわけか木曜日に食べられます。イタリアでもニョッキは木曜日に食べると聞いたことがあるので、そもそも宗教的な習慣に理由があるのかもしれません。
時間はかかりますが、比較的身近な材料でできるノルウェー料理、一度作ってみてくださいね。
Komlemiddag

提出後…. About this summer

この5月に修士論文を提出し、6月に試験を受けるまで、毎日とても気の張った生活をしていました。修士のプロジェクトなんて、自分の好きなことを好きなようにできる夢のような時間だと皆思うとは思いますが(そして、それもまた真実ですが)、(多少大げさですが)血を吐くような気分を何度も味わいながら書いた部分もあります。せっかく本場に来て、「これはこういうことなんでしょうか、それとも違うんでしょうか」みたいな質問をしたくても、まともな答えも得られず、(もしくはキレられ)自分でなんとか答えを出さざるを得ない部分が大部分で、何度呪いの言葉を吐いたことでしょうか。(失礼!)最終的には、愚痴をこぼすことにも疲れ、自分の勘を頼りに、きになる部分を潰していった感じでした。試験の日まで、何度悪夢に苛まれて夜中に目を覚ましたか!
ところが、試験が終わり、夏休みに入って、古い曲を見直したり新しい曲を見たりする段階で、今まで気がつかなかった、あるいは興味を持たなかったことに気がついたり、面白いと思えたりすることが増えたように思い、ようやく、悩みに悩んだことが無駄ではなかったのだ(あるいは、それもまた幻想かもしれないけれど)と思えるようになりました。
今年はランズカップレイク(伝統音楽の大会)が例年よりも遅く開催されたため、自分の曲を本格的に見始めたのが修士の試験が終わってからでしたが、曲の構造、バリエーション、音楽的な内容など、準備も楽しかったのです。
7月後半からはまた少しテーマを変えて、新しい曲を10曲ほど同時進行で見ています。これについても、以前とは違った見方ができて来たのも、一つ一つの素材をより詳しく(誰かからの答えを待つだけでなく!)見られるように訓練してもらったからです。
ハーディングフェーレをはじめてまもない頃は、伝統曲の多くの曲が似ているように聴こえ、(実際、お互いにとても似ているのですが)その一曲の中から面白い部分を抽出するのも容易ではありませんでした。ですが、いくつかの同じ曲を見たり聞いたりして思うことと言えば、いかに古いプレーヤーは自由に弾いていたかということです。
あるプレーヤーにはあったその「部分」が別の人にはなかったり、弾く順序が違っていたり、でもみーんな同じ曲と見なされている。そして、「その曲をあなたならどう弾きますか?」となった段階で、いろんなアプローチの仕方がある。。何れにしても、解釈には想像力/創造力が必要になるということ。時には新しい部分を付け加えたりしても良いのです。
伝統と創造、伝統曲と新しい曲とは相反するもののように思われがちですが、まさに表裏一体。創造性は伝統の中に生き、創造無くしては、伝統はただのコピーです。今となっては何度も聞き古されたような台詞ですが、今まさに、実態を持って感じられる今日この頃です。
I had a lot of stressful days until I finished the master’s exam in June. Many people may think that masters period should have been fantastic, because I was working with the things that I loved. Well, yes. Yet, it was stressful to write a thesis! I had to think and decided mostly alone, and it was not known if the answers I chose were right or not.
These days I gradually come to think that the days I straggled a lot were not meaningless. After the exam, I started to study the new tunes, and I definitely find much more elements that I think are interesting than before.
Through masters project I listened the tunes which were on the archives. Interesting enough, I felt that the old players often played more freely than players today. (Or probably only “more freely than me”? ) Often I could find very different versions of the same tunes played by the different players.
Then, “How do you / I play this tune?”
There are lot of ways to interpret one tune. And it is even not wrong to add a new melody if it suits well to the original tune. (though many players seldom do this.)
Creativity and tradition are not two different things in Norwegian traditional music. Creativity is living in the tradition. I gradually come to understand what this means.
(The picture is the waterfall in Rjukan “Rjukanfossen”.)
Rjukanfossen

 

修士号を取得しました Master’s degree in traditional art!

2017年6月にラウランドのノルウェー南東大学(旧:テレマルク大学)人文学部伝統文化学科にて修士号を取得しました。この学校はノルウェーの伝統音楽に関する高等教育機関では一番古い学校で、学ぶ/学んだ伝統音楽学生数も最も多い大学です。
マスターのテーマは、古いアーカイブ資料をもとに演奏解釈と演奏をするというもので、私がテーマにしたプレーヤーは、テレマルクはティンの往年のプレーヤー、クヌート・ダーレ (1834-1921)。現在でもファンが多く、特にその孫のヨハネス・ダーレ(1890-1980) の名演奏を通じて多くのレパートリーが現在でも親しまれています。クヌート・ダーレはその時代のプレーヤーとしては大変珍しく、100曲以上のレパートリーをアーカイブ録音に残しています。自らエドヴァルド・グリーグに手紙を書き、レパートリーを楽譜に書きおこさせました。彼のレパートリーの一部がグリーグのOp.72の基盤となっていることはあまりにも有名です。
古い資料から演奏解釈するためには、その時代状況、資料のもつ性格なども知らなければならず、また、実際に目の前で演奏されたものではないために、録音資料を詳細に聞いていく必要があります。また当時はまだ楽譜に書く”書式”も現在ほど整備されておらず、楽譜資料にはところどころ間違いも見られます。そういう歴史的な資料を扱わせてもらえて、とても学びのある修士となりました。
今年終盤、来年にかけて、何らかの形でこの学びを発表したいと考えています。クヌート・ダーレのレパートリーをコンサートで弾いてから今年で10年。以前よりは理解が深まったかなと考えています。
ハーディングフェーレを弾きはじめてから15年以上が経ちました。最初に大学で学んだのが2005年のこと。当時は、片言のノルウェー語で、本を読み、会話をするのがやっとだったところが、論文を曲がりなりにも書けるようになりました。長い道のりでしたが、最初に来た頃を昨日のことのように覚えています。お世話になった先生方が、賞をとられたり、退官されたりするにつけて、年月が経ったことを実感しています。
I got the master’s degree in traditional culture in June, 2017 at the University College in South-East Norway in Rauland. My master’s project was to play the tunes after the old archive recordings and notes, especially focused on the “spelemannen” Knut Dahle (1834-1921) from Tinn in Telemark.
I greatly thank to my teachers and the institutions that they allowed me to study this theme. I learned about how to handle the historical materials, got understanding of the historical background of his period. And this helped me to interpret his playing style.
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