まず、ナットの交換は、もともとついていた白いボーン素材のものから、黒檀のものに作り変えてもらうことになりました。ハーディングフェーレの場合、弦と弦の間隔はバイオリンよりも広めに作られていることが多く、(これは、多分ノルウェー人男性の手の大きさに合わせているからかと思います)私の場合は、これを限りなくバイオリンの弦間隔くらいのところまで縮めてもらいます。あまり縮めすぎると、かえって隣の弦に指が触れやすく、弾きにくくなります。
それから、弦高の調整です。最初、弦高を見てもらうと、やはり非常に高く設定されているとのことでした。「最終的には駒を削って調整するかな」と言いつつ、試しに、駒を5mmほど移動させてみて、高さを見てみようかということになりました。5mmというと、かなりの移動になるので、駒と同時に魂柱も移動することになります。
数時間の作業の後、第一段階の調整を終えた楽器を弾いて見ると、弦の高さはちょうどよくなっています。でも、見た目がなんか変。駒を前に移動したことで、糸どめに近づきすぎてアンバランスな見た目になってしまいました。そこで最終的に、2mmほど後ろに戻してもらうことに。作業の間中、一旦弦を全て緩めてリラックスさせた楽器は、まるで別のものになったかのようによく響きます。以前は高音が少し甲高い印象でしたが、この作業のおかげでその甲高さはなくなり、リラックスした低音のよく響く、「あの」Hellandの音に。
さらに、響きを調整するためには共鳴弦の太さを変えるのもコツだという話に。これは以前から作業の合間に何度か言われていたのですが、私はすっかり忘れてしまっていました。ハーディングフェーレのメロディ弦には10.5-11-11.5-12の4種類が主に流通しています。共鳴弦の方も、太さは0.22から0.30まで幅広くあります。人によって好みはありますが、弦の組み合わせも一定ではなく、細い弦と太い弦を組み合わせることも多いです。これには諸説あり、同じ太さを好む人もいます。私の場合は、比較的太めの共鳴弦を同じ太さで張っていたのですが、それだと小さな楽器にはテンションが高すぎるかもしれない、と指摘されました。
時間がきたので、ここで工房を後にし、後日、共鳴弦を変えて見ることにしました。指摘された通り、細めの共鳴弦を3種類の太さを組み合わせて張って見たところ、これまた見事に響きが変わりました。これまであまり弾いていなかったこの楽器、これからしばらくはよく弾くことになりそうです!
*ここに載せた調整は、絶対的なものではないかもしれませんが、どなたかの参考になるかもしれないという思いで、ここに記録として書いておくものです。