シリーズ2では、テレマルクの楽器に焦点を当てたいと思います。テレマルクの新旧の楽器について詳しいのはボーミュージアムBø Museumの展示です。ここに集められているのは、テレマルクの、そしてハーディングフェーレの歴史上、特に重要とも考えられるへランドHelland、スタインシェンダーレンSteintjønndalenの作家たちの作品を中心に、それ以前に活躍した、カール・ルーエ Karl Rui (1742-1829) の作品を展示しています。へランド家、スタインシェンダーレン家どちらも実は元は大きな一つの家族。世代を経てボーからスタインシェンダーレンへと分家した親戚同士です。
なぜ、Helland、Steintjønndalenが重要なのか?ハーディングフェーレはその名前にも代表されるように、ハルダンゲル地方を中心に西ノルウェーで最初に作られ始めました。18世紀を通じて各地へと広がりを見せましたが、形状は主に小型であることは共通していたもののまちまちで、弦の数(特に共鳴弦の数)は定まっておらず。装飾も多岐に渡っていました。(vol.1の写真で楽器の頭部をよく見ると、現在一般的なライオンや竜とは随分と違うのがわかるかもしれません)Bjørn Aksdalは歴史的なハーディングフェーレの楽器の発展は3段階に分かれると定義しています。1,Jaastadfeleを含む17-18世紀に作られた農民の楽器 2, ハルダンゲルのBotnen一族の楽器 3, テレマルクの近代化された楽器
楽器の発展において一大革命を起こしたとされるのが、エーリク・ヨンソン・へランド Erik Johnsen Helland (1816-1868)なのです。
へランド家のヨン・エリクソン・へランドの息子として生まれたエーリク・ヨンソンは、ハーディングフェーレ職人の父の元、かなり若い頃より楽器づくりを始めすぐに頭角を表し、職業的楽器作家となります。わずか52年の人生の晩年に(1862年)コペンハーゲンへと留学しバイオリン制作を学びその頃の経験が、晩年のいわゆる「モダンな」ハーディングフェーレのモデルと言われるようになったと一般的に語られていました。ところが、2009年に発表された歴史的ハーディングフェーレのサイズ測定結果からは、少し別の事実が明らかになっています。ここについてはまた後日改めるとしますが、ともあれ、エーリク・ヨンソンの重要な業績は楽器の近代化であると考えられています。
エーリク・ヨンソンとちょうど同時期に楽器の近代化を推し進めていったと言われるのが、エーリク・ヨンソンの弟でHelland家から分家したEllev Jonsen Steintjønndalen(1821-1876)。この兄弟は1850頃より新しいモデルを作って行きました。
トータルで4世代に渡ってハーディングフェーレの職人を生み出した一族ですが、このエーリク・ヨンソンの業績はハーディングフェーレの歴史に転換をもたらしました。そして、その後もこの一族が作り出す楽器が各地で作られるハーディングフェーレのモデルをリードしていきました。
写真は左より、Erik Johnsen Helland “Kjempa”、Jon Eriksen Helland、Karl Rui。(Bø Museum展示 2016)
ベルゲン博物館には、へランド一族の4世代目の作家の一人、Gunnar Hellandの作品 (1930)も収められています。
またトロンハイムの楽器博物館にも、へランド一族初代のJon Eriksen Helland、4世代めの作家の一人にして、最も偉大と言われているOlav Gunnarson Hellandの作品(1902)が収蔵されています。写真は左からJon Eriksen Helland, 横から並んでみたOlav G Helland & Jon Eriksen Helland, Olav G Helland (正面)Olav G Helland(背面)
ハーディングフェーレの発展の歴史上の3つの段階と上に書きましたが、現在一般的に弾かれている楽器の90%以上はモダンの楽器の部類に入るといって良いでしょう。とはいえ古い楽器は、古い時代への憧れや探究心となって多くのプレーヤーへインスピレーションを与え続けています。
まだまだ続きます。
Here I pick up some of the old and more modern hardanger fiddles from Telemark. These pictures are mostly “Hellandfele”, except one which was made by Karl Rui, who was probably the first hardanger fiddle maker in Telemark (1742-1829). I visited Bø Museum in Telemark, Bergen Museum and Ringve Museum in Trondheim.
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